『今昔物語(下)』は「マンガ日本の古典」の第9巻として1996年に刊行されました。
12作品が収録されています。上巻と同様、怪異譚、エロチシズム、スカトロジーなど、筆者の趣味が作品の選択に反映
されています。原典の初出順に話が並べられているわけではないので、本書から読んでも
さしつかえないと思います。「あとがき」がある分、こちらの方がかえってよいかもしれ
ません。「あとがき」では『今昔物語』を手がかりに、幸福について語っておられます。
原典は12世紀に成立していますが、本書には平安期の闇といったものをいささかも感じ
させません。たとえば諸星大二郎さんが描くなら、正反対の作品集になったと思います。
やはり作家の個性が出るのだなあ、と本書を読んで感じました。なにせ一番恐いのはタイ
トルページの絵ですので。むしろ明るさが全編にただよう作品集です。
「生霊」という作品では例外的に、先生ご自身が冒頭に出演され、案内役をつとめられて
います。このように水木色をもっと出せば、作品としての評価も上がったのではないで
しょうか。
内容的にあっさりしているので星3つとも思いましたが、いつものごとく風景が過剰なま
でに緻密に描かれていますし(この画風になじんでしまうと、他の作家の作品がまっ白に
映ってしまいます)、人物の輪郭を肉太で描く、昨今の力強いタッチを堪能できますの
で、星4つとしました。
なお単行本には「マンガ日本の古典」の刊行を告知するしおりがついており、そこには水
彩画で描かれた先生の自画像がちいさく印刷されています。
「ねずみ大夫」
「安倍晴明」
「稲荷詣で」
「幻術」
「妻への土産物」
「水の精」
「墓穴」
「引出物」
「外術使い」
「寸白男」
「生霊」
「蛇淫」
「あとがき」